鍼灸接骨院
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こんにちは!さくらやま鍼灸接骨院(名古屋市昭和区)の谷澤です。
荷物の下敷きになってから母指から中指に痺れが出るようになった方の症例です。
【ダブルクラッシュ症候群とは】
神経が2箇所で圧迫され神経症状を来たしているものをダブルクラッシュ症候群といいます。
二重神経障害とも呼ばれます。
※クラッシュ症候群とは全くの別物です。
【検査】
◆スパーリングテスト(+)
首由来の神経症状(頚椎症性神経根症)がある時に77%陽性となります。
◆モディファイドアドソンテスト(+)
胸郭部由来の神経症(斜角筋症候群)がある時に63%陽性となります。
◆モーリーテスト(+)
この時点で、2箇所神経を圧迫している可能性があるため、
◇頚椎症性神経根症
◇斜角筋症候群の
ダブルクラッシュ症候群を疑いがあります。
この2症については後述します。
さらに、
◆ULTT2a(+)
正中神経に障害がある時に97%陽性となります。
◆デルマトーム(皮膚分節)
母指から中指に神経症状があったため、頸髄の6-8番の障害(特に6番)が最も考えられます。
頸椎症性神経根症は第6頸髄で生じている可能性が高くなります。
また、正中神経は頸髄の6-8番、胸髄の1番により構成されるため、ULTT2aで陽性だった正中神経と重なります。
【神経支配領域】
正中神経の皮膚の支配領域も母指から薬指と症状が重なります。
以上から正中神経が首と胸郭で障害されていることが示唆されました。
【治療】
◆第5頚椎から第7頚椎まで鍼
→頚椎の可動性を上げるため
◆前斜角筋への鍼
→前斜角筋による神経圧迫を和らげるため
◆正中神経への鍼
→正中神経の活性化のため
を行いました。
3回でほとんど感覚障害がなくなりました。
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ここからは上記したものをもう少し専門的に細かくみていきます。
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【斜角筋症候群とは】
斜角筋症候群は胸郭出口症候群の一種で、中斜角筋、前斜角筋、第1肋骨により腕神経叢または鎖骨下動脈が圧迫され、上肢に神経症状や血管症状がでるものをいいます。
<胸郭出口症候群の分類>
胸郭出口症候群(TOS)は多くの症候群の総称のため、しっかりと鑑別することが必要です。
大きく3つに分けられます。
1.神経性胸郭出口症候群(nTOS)
…全体の90%以上を占めます。
2.動脈性胸郭出口症候群(aTOS)
…全体の5%を占めます。
3.静脈性胸郭出口症候群(vTOS)
…全体の1%を占めます。
2.3はまとめて血管性胸郭出口症候群といいます。
さらにこれらは神経血管絞扼部位で
〇斜角筋症候群
〇過外転症候群(小胸筋症候群)
〇肋鎖症候群
〇頚肋症候群
に分けられます。
これらを腕神経叢圧迫型(全体の約10%)といいます。
※構造上、静脈性斜角筋症候群は起こりません。
また神経が伸ばされることにより症状を来す腕神経叢牽引型(全体の約90%)もあり、
この12種類+原因不明の総称が胸郭出口症候群です。
<胸郭出口症候群の症状>
胸郭出口症候群の98%は手に感覚障害を起こします。
多くは手全体(胸郭出口症候群の58%)、次いで小指、薬指(26%)に感覚障害を起こします。
今回の症例は親指から中指(14%)でした。
他には筋の弱化を起こします。
また、肩の痛み(88%)や頭痛(76%)を伴います。
◆神経性胸郭出口症候群では冷水に手を入れた時に痺れや痛み、変色(チアノーゼ)がでる(レイノー現象)こともあります。
◆動脈性胸郭出口症候群では
指の蒼白、冷えが伴うことがあります。
◆静脈性胸郭出口症候群では
痛みがほとんど起こらず、上肢の腫脹を伴います。
◆斜角筋症候群は胸郭出口症候群でも特別で、唯一、肩甲上神経、肩甲背神経、長胸神経症状を起こすことがあります。
<胸郭出口症候群の検査>
これだけの種類の中からどの症候群か特定する必要があるため、検査の種類も多くあります。
私の知る限りでも以下の通り沢山あります。
腕神経叢圧迫型または血管性胸郭出口症候群の検査は
▶ルーステスト
(別称:3分間挙上テスト)
(別称2:イーストテスト)
▶エデンテスト
(別称:ミリタリーブレーステスト)
(別称2:コストクラビクルテスト)
▶モディファイドライトテスト
(別称:アレンテスト)
▶ライトテスト
▶アドソンテスト
▶応用アドソンライトテスト
▶モディファイドアドソンテスト
▶ハイパーアブダクションテスト
▶ハルステッドマニューバーテスト
▶チネルサイン
▶モーリーテスト
▶スープラクラビクルプレッシャーテスト
▶エレべートアームストレステスト
腕神経叢牽引型の検査法は
ULTT(Upper Limb Tension Test)がよく使われます。
▶ULTT1
▶ULTT2a
▶ULTT2b
▶ULTT3
と4種類あり、どの神経が牽引されているか検査できます。
▶神経学的マニュアル筋力検査
普段通りの姿勢で筋力検査をした後、ULTTまたは圧迫型胸郭出口症候群の検査の姿勢で筋力検査をし、筋力が落ちた時に陽性とするテストです。
▶疼痛緩解動作
検査は基本的に一時的に症状を悪化させる動作をしますが、常に症状が出ている場合、反対に症状が和らぐ動きを探すことで原因部位を特定することもできます。
▶画像診断
レントゲン、MRI、血管造影、腕神経叢造影が使われることがあります。
これは全て腕神経叢圧迫型(約10%)または血管性胸郭出口症候群の診断法です。
胸郭出口症候群は画像診断で分からないことがあり、胸郭出口症候群の診断は主に症状からされるため、画像診断は補助的に使われます。
腕神経叢牽引型(約90%)の画像診断法はありません。
今回の症例では
◆モディファイドアドソンテスト
◆ULTT2aが陽性でした。
モディファイドアドソンテストは動脈性斜角筋症候群の検査法ですが、
応用して神経性斜角筋症候群のテスト法に変えることができます。
今回は神経性斜角筋症候群の検査法で行ったため、
圧迫型神経性斜角筋症候群と
ULTT2aから腕神経叢牽引型の可能性がありました。
ここから
◆モーリーテストを行いました。
モーリーテスト陽性は通常、腕神経叢圧迫型胸郭出口症候群にみられますが、検査部位を少し変えることで牽引型胸郭出口症候群の検査法に変わります。
これはどちらも陽性でした。
圧迫型/牽引型胸郭出口症候群の診断基準に従うと
<腕神経叢牽引型の診断基準>
◆上肢の下方ストレスで悪化
◆肩甲帯の挙上で一時的に緩解
この2つが当てはまりませんでした。
以上から腕神経叢圧迫型神経性斜角筋症候群が最も疑わしいと考えました。
【腕神経叢牽引型が多い理由】
腕神経叢は神経の中でも牽引に弱く、軽い持続牽引で、血流障害が起きます(血液-神経関門の破綻)
このため、なで肩のように常に腕神経叢が持続牽引されている人に多くみられます。
【鑑別診断】
胸郭出口症候群と間違われる疾患は多くあり、間違って治療を受けると治りません。
◇正中神経エントラップメント(特に手根管症候群)
…手関節で神経絞扼が起きること
◇尺骨神経エントラップメント(特に肘部管症候群)
…肘関節で神経絞扼が起きること
◇頚部神経根エントラップメント(特に頚椎症)
…頸椎で神経絞扼が起きること
◇頸椎椎間関節症候群
…頸椎の関節の障害
◇筋筋膜性疼痛症候群
…筋筋膜の障害
etc.
これらは鑑別するための徒手検査があるため、検査を行えば誤診は起こりにくくなります。
稀なものでは
◇心臓病
…心臓疾患の総称
◇レイノー現象
◇パンコースト腫瘍
…肺ガン
も誤診の対象となります。
これらは徒手検査による鑑別ができないため、胸郭出口症候群様症状に内科的症状が伴えば病院での検査の対象となります。
次に
【頚椎症性神経根症(頚椎ヘルニア含む)とは】
頚椎の関節や骨の異常により、神経根を圧迫することを頚椎症性神経根症(CSR)といいます。
以前こちらでも書きましたが、
頚椎ヘルニアは神経根症状を起こすことは頚椎症ほど多くないため、神経根症状がある場合、頚椎ヘルニアより先に頚椎症を疑います。
これは頚椎の特殊な構造によるもので、
下図の様にヘルニアとなる椎間板と神経根の間には骨が隔てているため、ヘルニアが神経根を圧迫しづらくなっています。
それでもヘルニアが神経根を圧迫することは多少あります。
反対に胸椎ヘルニアや腰椎ヘルニアは神経根圧迫しやすいです。
【神経根症とは】
神経根の圧迫により感覚障害や運動麻痺が起こることをいいます。
※文献により神経根症で痛みが起こると書いてあることもありますが、生理学的に神経の圧迫で痛みが出る仕組みはない(または未だ見つかってない)ため、基本的には神経根症状は感覚障害と運動麻痺です。
【検査】
▶ジャクソンテスト
▶スパーリングテスト
▶椎間孔圧迫テスト
▶牽引テスト
▶バルサバサテスト
但し、これらは神経根のテストでしかなく、ヘルニアと頚椎症の鑑別は画像診断で行われます。
【治療】
〇ほとんどは手術なしで改善します。
手術した場合としない場合では手術した方が改善は早いものの、1年後の改善率に差はないため、急を要する症状がない場合は手術は推奨されません。(頚椎症性神経根症の外科治療に関するガイドラインより)
〇頚部障害に対しては鍼はマッサージよりも効果的です。
(Trinhら,2006)
〇何もしないより、手術以外の治療を受けた方が早期に症状が改善します
(頚椎症性神経根症の外科治療に関するガイドラインより)
【ヘルニアで注意する動き】
ヘルニアの場合、頭を前に倒す動作(屈曲)を続けることで悪化することがあります。
これは上体起こし(腹筋)でヘルニアを起こすのと同じ仕組みです。→「腹筋」
首を反る動きで悪化することもあります。
首を反る動きで良くなることもあります。
そのため、首を動かすことは必要ですが、無理に動かさず、
運動療法を取り入れる際は注意が必要です。
【補助検査】
症状の部位からどこに障害があるか予想できます。
▶ミオトーム(筋節)
▶デルマトーム(皮膚分節)
▶スクレロトーム(硬節)
特にミオトームが最も精度が高いため、重視されます。
詳しくはこちら
【検査9割治療1割】
検査9割治療1割という言葉があるくらい検査は重視されます。
当院では誤診を限りなく減少させるため、しっかり検査していきます。
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